『親密な他人』(c) 2021 シグロ/Omphalos  Pictures 配給:シグロ

息子の師が「黒沢あすか」ファンだった

私の出演作は暴力や性描写が多いので、息子たちには「大人になってから見せればいいや」と思っていたものの、高校生の次男は、私が留守の間に『六月の蛇』や『冷たい熱帯魚』を観たようで。

「やってるね~。普段の母さんは気が抜けてボーッとしてるのに、映画では正反対で面白いよ」って。おかげで、私が次男に真剣に注意しているときでも、「今、黒沢あすかのスイッチが入っているね」なんて、へらへら笑っていたりして。

長男は、大学に入るまではいっさい観ていませんでした。ところが、大学でお世話になった教授が、偶然、黒沢あすかの大ファンだったそうで。「黒沢」は芸名で、息子の苗字は違うので、長男が私の息子であることを知らずに、教授は黒沢あすかの素晴らしさを力説してくださったとか。そのとき「僕は初めて母さんを誇りに思ったよ」と。それ以来、私が出演する舞台も観に来てくれるようになりました。

次男が言うように、私は家に帰ると気が抜けて、たちまち主婦モードに切り替わります。ジャガイモの皮を剥いたり、庭いじりをしたり、もともと家のことをするのが大好きなんですね。出かけるよりも家にいたいほうなので、いったん仕事を離れたら、滅多に家から出ないんです。

それだけ家庭が好きなのでしょう。家族がいなかったら、絶対に頑張れない。家庭があって、自分の人生が幸せだと思えるからこそ、思う存分、振り切った役をやれる。嬉々として過激な役を演じられるのも、3人の息子たちと理解ある夫がいてくれるおかげだと思います。