7年間、めまいに悩まされた40代

振り返ってみれば、30代は私生活でも激動の時期でした。34歳のときに、特殊メイクアップアーティストの夫と2度目の結婚をして、次男、3男を出産。実家の母の手も借りていましたが、3人の息子たちを育てながら、1年間に何本もの仕事をするのは、肉体的にもさすがに大変でした。

しかも、私のところにオファーが来るのは感情の波が激しいエキセントリックな役が多く。役になりきって、朝から晩まで仕事をしてくると、心身ともにヘトヘトに疲れてしまい、翌日はまったく使い物になりません。それでは、家事や育児もままならない。それで、40代を目前に、こうした役とはもう決別しようと決めました。

ところが、『六月の蛇』のときと同じで、「やめる」と決断すると必ず大きなお話が来るんです。過激な役から卒業しようと決めた直後に、『冷たい熱帯魚』のお話をいただいて。鼻歌まじりで死体を解体する極悪妻の役。

「じゃあ、これで最後だから、思い残すことがないように存分にやらせてもらおう」と、包丁を手に血まみれになり、「どうせやるなら、とことんまで極めたほうがカッコいい!」と、全裸でカメラの前に立ちました。39歳のときでした。

おかげさまで、この作品は大きな反響を呼び、今でも私の代表作と言われます。

ですが、やっぱり限界で体調を崩してしまいました。ある朝、起きたらふわふわと目が回っていて、「なんだか、おかしい」と思いながら立ち上がったところ、一気に吐き気が襲ってきたんです。

でも、その日は映画の撮影が入っていたので休むわけにはいきません。乗り物酔いの薬を飲んで、なんとか現場へ。ところが、炎天下で撮影がスタートしたら、汗をかいているのに寒くてゾクゾクするんです。そのうち、目の前がぐわんぐわんと回り始めて、またしても激しい吐き気がこみ上げてきて。