万事、悪運の強い男
病名は前立腺肥大。さすがのめげない男も、細い管を局部にさしこまれ、尿を袋にためる処置をされて、しょんぼりしていた。
「水道管だって長いこと使っていると、水あかが蛇口のとこに溜まってつまるだろう。それと同じだ」と夫は言った。夫のは長年ほったらかしだったので、よほど溜まっていたらしい。
点滴を受けた後自宅に戻ったものの、薬を飲んでもつまったまま。そのうち手先が器用な夫は、尿を入れる袋用のポケットをズボンの内側に縫いつけ、外出しはじめた。
しかし、治りが遅く、前立腺がんの疑いもあるため、検査入院を医師にすすめられる。がんを示す数値が異常に高いらしい。にもかかわらず、夫は「俺は病院はいやだ。日帰り検査がいい」。本当に開いた口がふさがらない。
検査の結果、がんではないとわかると、手術も受けずに管と袋をぶら下げたまま、福岡でのマンション探しに奔走。前立腺肥大? いつのまにか治っていたみたい。万事、悪運の強い男なのだ。