とても痛かった人工授精

一通りの検査をした後、「あなたは不妊症じゃありませんよ」と笑顔で言った医師が私に見せたのはグラフのような用紙でした。遠い記憶ですが、「注射の後の反応がとてもいい」と。心から安心したのを憶えています。

ですが、そこから妊娠の兆候は全く表れず、「少しでも早く子どもを」と思っていた私は、半年後、2歳上のフリーアナウンサーの方からの紹介で、更年期を専門にしているクリニックに、まず相談に行きました。「完全予約制だから待たずに済むし、とってもいい先生だから」と。

銀座にあるそのクリニックは、清潔感に溢れ、院長の著書は当時よく売れていました。私の本当の相談が「更年期ではなく不妊」と知るや、院長は「人工授精ぐらいならウチでもできますよ」と仰り、そこで初めて夫に協力を仰ぎ、人工授精を試みました。

指定のケースに夫の精子を入れ、雑誌で読んだ「胸の谷間に挟んでおくと温度が安定するのでいい」というのを信じ、大切に持って行ったのを憶えています。注入後、子宮がクゥーッと収縮するような感覚に襲われた途端、激痛が走り、私はそれから約3時間、診察室脇のソファで休むことになりました。

どんな本を読んでも「すぐに終わる」「10分ほど休憩したら帰れる」などと、すごく簡単なものだと信じていた人工授精がこんなにも痛いなんて……。もう2度とやりたくないと思ったものです。

結局、最初の人工授精は失敗に終わりました。それからも高齢出産や不妊症について記された本を買いまくり、次に予約をとったのは、「自然に」を謳う著者が院長のクリニックでした。