(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
圧倒的なオーラを放つトップスターの存在、一糸乱れぬダンスや歌唱、壮大なスケールの舞台装置や豪華な衣裳でファンを魅了してやまない宝塚歌劇団。初の公演が大正3年(1914年)、今年で107年の歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」には「花・月・雪・星・宙」5つの組が存在します。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第16回は「モテる人 瀬奈じゅんさん」のお話です

咄嗟に出た言葉は「イヤです・・・」

「イヤです・・・」
これは私が「組長」の辞令がおりた時に、
所属する宝塚歌劇団の理事長に思わず投げつけた言葉です。

話は第一回目の冒頭に戻ります。

理事長室に呼ばれて緊張している私に、
思いもかけない「組長」の辞令が。
あまりにも驚いて咄嗟に出た言葉は
「イヤです・・・」
というバカ正直すぎる言葉でした。

歴代の組長さん達は、皆さん人望があるお方でした。
何か問題が起きたときは皆を制し、90人の組子をまとめ、
雰囲気作りなども含め、全てに気が配れる完璧な人。
舞台人としても素晴らしい役者さんばかりでした。

それに比べ、私は人前で話すことは苦手で、
人を引っ張っていくタイプではなく、むしろその逆です。
体は大きいけれど、人の後ろに隠れ、
いつも受け身で自分に自信がありませんでした。
もちろん統率力などは皆無です。

何より舞台が好きで、ただ舞台人でいたい、
プレイヤーでいたいと思っていました。