「救急車呼びましょうか?」
「いや、娘もいるし、起こさなきゃ」

「先に行った方がいいですよ、病院」
「猫のごはんと、犬の散歩に行ったらすぐに」

本連載をもとに青木さんが書いた初の小説『母』(中央公論新社刊)

「先に病院でしょう」
「犬の散歩だけは、行かないと。トイレは散歩でしかしないのよ」

「救急車、よびます?」
「いや、行けそうな気がする、自分で。いや、行けそうな気がする〜」

「エロ詩吟ですか?」
「舞台でね、天津さんのエロ詩吟を少し拝借してお稽古しているわけ」

「運転しないでください、タクシーにしてくださいよ」
「どこに行けばいいんだろう。あーなんだか、ぼーっとする。まずい気がします」