そのうち、また別の眼鏡をかけたベテラン医師が点滴の用意をしてくれた。
わたしが点滴をするとき「血管が細い」という話題が常だ。実際なかなか入らず迷惑をかけてしまう。
出産経験があろうが手術経験があろうが、やはり注射は初めてのように緊張する。
子どもとの二人暮らし緊急事態に備えるには
意識が朦朧としてきた。
30分ほど経ったころ
「PCR検査、陰性でしたよ」
とイケメン医師が教えてくれた。
「点滴全部終わるまで休んでいましょう」
ありがたい話である。
すると、眼鏡をかけたベテラン医師が入れ替わりでカーテンをあけて入って来るや否や
「じゃあ点滴ぬきますね」と言った。
あれ? 点滴、終わりまでやるのでは?
あれも幻。
これも幻。