「お節介の復活」をよろしくお願いします

私の人生って本当に不思議です。

私には今現在、血のつながりを持っている家族は誰もいません。親戚も、判明している親戚はゼロです。

だけど私が人生で出会っていく人たち、出会っている方々、フローラはもちろんですが、給食のオバちゃん、スーパーの試食コーナーのオバさん、校長先生もそうですが、誰ひとり、血のつながりがない方々ですが、全員心でつながって、心で結びついています。

「心には、国籍、国境も関係ない」。私は出会ったすべての人から愛情をもらえています。その度に感じるのは、人というのは本当に純粋に相手を見て、相手を愛することができている。だけど今はどこかで、肌の色を感じてしまったり、国籍でその人を見たり。流れてくる様々な言葉に私たちは振り回されていく。

しかし、29年前に日本に来たときは、もっと「お節介」をしてくれる人がいた。実際に私が出会った方々は、全員私とフローラのことを素直に「ひとりの人」として、それが「目の前で困っている人」だったので、手を差し伸べてくれて、握った手を離さなかった人たちなのです。

今日本で29年以上も生活することができているのは、「助け合い」と「お節介」があったからです。「親ひとり、子ひとり」ひとり親家庭の親御さんや、そのお子さんにも響くのではないかな??

今、自分を守ることで精一杯の世の中かもしれないけれどもう少し落ち着いて、もう少しみんなに余裕が生まれたら、「お節介の復活」をよろしくお願いいたします。

※本稿は、『言葉の花束』(講談社)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
いじめをきっかけに引きこもり、不登校になった私が、弁論大会で覚醒。体験を共有することで、つらいだけのこともそうではなくなる
貧困虐待家庭に育った後遺症か。治らない頭痛は鎮痛剤の過剰摂取だった。自分が殴られていなくても、「虐待被害者」なんだと気づく
自慢の娘に「自分はアダルトチルドレンだと思う。もう連絡しないで」と絶縁されました〈母娘のこじれた関係・相談室〉

言葉の花束』(著:サヘル・ローズ/講談社)

イランで生まれ、養子縁組した養母と8歳のときに日本へやってきたサヘル・ローズ。外国人母子家庭として暮らし、差別も貧困もいじめも経験した彼女は、多くの苦難とどう向き合ってきたのか? 腐らず、前向きに生きてきた背景に何があるのか? さまざまな困難を切り抜けてきたからこその言葉を花束に紡ぎ、読者へ捧げた一冊。