『捨てきらなくてもいいじゃない?』『人生の夕凪』『60歳、ひとりを楽しむ準備』などの著書を持つ、エッセイストで作家の岸本葉子さん。岸本さんと言えば「NHK俳句」への出演でもおなじみですが、実は俳句デビューは40代半ばからで、なかなか定期的に作ることもできなかったそう。そんな当時の自分と対面できたなら伝えたいことがあるそうで――。
「俳句、はじめました」と周囲にとにかく言ってみよう
句会の楽しさを今は臆面もなく語る私だが、40代半ばで最初の一歩を踏み出すまで、とても時間がかかっている。
最初の句を作って半年間は、俳句番組にインターネットでときどき投句。月2回のあとは2ヵ月あくなど、不定期な作り方だった。作ることすらはじめずに入門書を読むだけだった年月もある。
その頃の自分と対面できるものなら言いたい。「そんなことしていないで、人といっしょに作る場へ早く出なさい、句会やカルチャー教室へ参加するのでも、結社に入るのでも通信指導を受けるのでもいい、何らかの方法で人に読んでもらい、反応の得られる場を探しなさい」と。
ある程度うまくなったら、そういう場にデビューしよう? それは間違い。うまくなっているかどうかなんて、自分では判断できない。判断できるつもりでいるのは、ひとりよがり。
私もインターネット投句していた頃は、自分の句がそこそこうまいけれど惜しいのか、箸にも棒にもかからないのか、わからなかった。
まずは本で勉強してから? 真面目な人ほどそう思うもの。俳句の基本ルールを学び、人の句を読むことはたしかに必要だ。
が、作りはじめると読み方が変わる。自分が五七五にまとめ上げられなかったあの風景をこう詠んだか、など、気づくことが断然多い。
私は最初のインターネット投句をして半年後、そのことを話した知人の紹介で句会に参加。以来月1回のペースで出るようになった。場を探している人にはこうおすすめしたい。
「俳句、はじめました」と周囲にとにかく言ってみる。
俳句をする人は多く、意外と身近にもいて、そこから道が開けることがあるものだ。