直太朗がミュージシャンを目指すなんて

そんなある日のこと。私がキッチンに立っていると直太朗がギターを持って現れ、「ねぇねぇちょっと聴いて」と弾き語りを始めました。息子が真剣に歌うのを聞いたのは初めてだったのですが、上手だなと思ったし、いい曲だなと思いました。歌い終わると彼は「この曲、歌わない?」って。つまり自分の作った歌のプロモーションをしていたのです。

そのとき私は何の意図もなく、「あなたが歌ったほうが良いんじゃない?」と言ったことを覚えています。それからすぐに、彼はストリートミュージシャンに。私が彼の背中を押したことがあったとしたら、その一度だけです。

それにしても、サッカーに夢中だったはずの直太朗がミュージシャンを目指すなんて、私にしてみたら青天の霹靂でした。同時にシマッタ! と思いました。こんなことならもう少し音楽に向かう状況を作って、学ばせておくのだった、と。

でも今や、親子でありながら音楽仲間。直太朗が若かった頃のように「カツゼツ!」などと口うるさいことを言っても、彼はもっと遠くを見ています。それどころか、私のほうが「今日のMCははしゃぎすぎだよ」などと指摘されてしまうことも(笑)。どうも子どもたちは親のはしゃぐ様子を見るのがイヤなようです。