確かな情報でつながることで、少数派でも孤独でなくなる

SNSは、マスメディアが正しい情報を伝えない時、個人が発信した情報をもとにして潜在的輿論を形成することに役立っています。もちろん、SNS発の情報がすべて正しいわけではありません。大事なことは、それを書いた人が誰かではなく、書かれている内容をしっかり吟味し、決して鵜呑みにしないことです。

こうして、吟味された情報によって形成された潜在的輿論は、人と人とを結びつけます。声高に主張される多数派の考えは少数派の考えをかき消すことになりますが、潜在的輿論によって多くの人が連携していることがわかれば、自分たちが少数派ではなく、したがって孤独ではないことがわかります。

潜在的な輿論を「顕在的」輿論にすることは、まだ今の時代でも可能ですが、いつまでもそうあり続ける保証はありません。今の時代ほど、連携の必要な時代はありません。

※本稿は、『孤独の哲学 「生きる勇気」を持つために』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
プライベートの語源は「奪う」だった!断るときには理由をいわないほうがいい
菅田将暉主演の『ミステリと言う勿れ』で話題!『自省録』のアウレリウスが「自分の中に引きこもれ」と孤独を勧めた理由 
好きでもない「ママ友」「パパ友」と付き合う必要はないと言える理由。「嫌われる勇気」という言葉に秘めた真意とは

孤独の哲学 「生きる勇気」を持つために』(著:岸見一郎/中央公論新社)

孤独感や孤立とどう向き合うべきか? どうすれば克服できるのか?老いや死への恐れ、コロナ禍やSNSの誹謗中傷などますます生きづらくなる社会に、「救い」はあるのか?
著者はアドラー心理学を読み解く第一人者だが、NHKの「100分de名著」では三木清の『人生論ノート』やマルクス・アウレリウスの『自省録』を取り上げるなど、古今東西の哲学に詳しい。哲人たちの思索の上に、自らの育児、介護、教職経験を重ねて綴る人生論。