ウォーミングアップでけが防止とパフォーマンス向上を

時折、「自分は静的なストレッチの準備運動だけでもケガをしたことがない」という人がいます。ウォーミングアップの目的は、ケガのリスクを抑えることだけではありません。競技に必要な動作をスムーズにし、体への負担を小さくするという効果があります。練習や試合で、自分のパフォーマンスを最大限に発揮するためにも、十分なウォーミングアップをした方がいいでしょう。

体の準備がしっかりとできた状態で練習に臨むことで、トレーニングの質が向上するはずですし、体をスムーズに動かせる方が、前向きな気持ちでトレーニングが行えるはずです。また、今までケガをしたことがなかったとしても、いつかケガをしたときに「ウォーミングアップを十分にやっておけば良かった」と後悔しないためにも、自分の体のことを過信しないようにしましょう。

もうかなり昔のことですが、私は学生時代に水泳の選手をしていました。もし、当時の自分に一つだけアドバイスをできるとしたら「もっとしっかりとウォーミングアップをしなさい」と厳しく伝えると思います。

もし、しっかりとウォーミングアップを行っていれば、合宿のときに脱落してしまった練習をやり切れたかもしれないし、選手選抜のときにライバル選手に抜かれてメドレーリレーのメンバーから外されなかったかもしれないし、絶対に負けたくない試合でタッチの差で負けることもなかったかもしれない。そんな思いがあるからです。

みなさんはそんな思いをしないよう、心臓と筋肉と関節の準備を整えてから、練習や試合に挑んでもらえたらと思います。

練習中や試合中に、「快適に動ける」「動きがいいかも」といった感覚が得られたら、それは正しくウォーミングアップができた証拠です。競技によって必要な動的ストレッチ、優先順位が高い動的ストレッチは異なりますし、適した時間や種目にも個人差があります。いろいろなやり方を試してみて、自分に合うウォーミングアップ方法を確立していきましょう。

 

※本稿は、『子どもを壊す部活トレ 一流トレーナーが教える本当に効く練習方法』(著:中野ジェームズ修一/中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


子どもを壊す部活トレ 一流トレーナーが教える本当に効く練習方法』(著:中野ジェームズ修一/中公新書ラクレ)

「そのトレーニング、子どもたちには危険です。」

皆さんは、部活動でどんな練習をしていますか? もしくは子どもの頃、どんな練習をしていたでしょうか。水分補給の禁止やウサギ跳びなど、今では考えられないようなことをしてきた人もいるでしょう。現在ではだいぶ変化してきたものの、世界のアスリートたちをサポートしてきた著者からみると、まだまだ改善すべき点が多く、学生たちの話を聞く度、驚愕することが多いと言います。本書は、フィジカルトレーナーとして青学駅伝部を優勝に導いた立役者の一人である著者が、勝つためのトレーニングやケアの仕方を教えるもの。「全員で同じ練習をこなすのは無理がある」「アキレス腱のばしの準備体操には意味が無い」「負けた試合を振り返るのは逆効果」など、熟知しているからこその目から鱗の情報も満載です。

今まさに部活動に勤しんでいる若者たちはもちろん、親や家族、コーチ、教育関係者など、成長をサポートする人たちも必読の1冊。日頃のトレーニングを効率良くする方法を知るのにも、役立ちます。
《「読売中高生新聞」好評連載「間違いだらけの部活トレ」待望の書籍化! 》