いつかは離れるのが自然な関係

昔から「遠い親戚より近くの他人」と言います。僕も頼りになるのは血縁でつながった関係ではなく、信頼でつながった関係だと思っています。

僕は大学時代、法学部でしたが、当時の六法全書に、「尊属(そんぞく)殺人」という言葉を見つけて違和感を覚えたことがありました。

「尊属殺人」というのは、簡単に言えば、「赤の他人を殺すより、家族殺しのほうが罪が重い」という法律です。

同じ殺人なのに相手が家族だと罪が重くなるなんて……。

納得できなかった僕は「なぜですか?」と教授に質問してみました。でも、満足のいく回答はもらえませんでした。今はその法律は改正されてありませんが、おそらく昔から家族とはそんな存在だったのでしょう。

家族というのは、いずれバラバラになるのが当たり前です。親の役目とは、子どもを教育し、自立させることですから、いつかは肉体的にも精神的にも親元を離れていかなければならないのです。

であれば、いつまでも一緒にいるほうがおかしいのです。

そう考えれば家族がバラバラになるのは喜ばしいことでは? もちろん、それが憎み合った状態ではいけませんが。

※本稿は、『増補版-弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


増補版-弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(著:
弘兼憲史/中公新書ラクレ)

定年後は持ち物や人間関係を整理し、身軽に人生を楽しもう!『課長島耕作』などで知られる漫画家が60歳からの理想の生き方をつづったベストセラーの増補版。

「常識という棚にしまったすべてのものを一度おろして、ひとつひとつ吟味してみませんか。そうすれば、きっとこれからの人生に必要なものと必要でないものが見えてくるはずです」(はじめにより)。