「人間の心の弱点3要素」とは

末井 ぼくには自分が下にいたいっていう思いがあるんですよね。人よりえらい、みたいなのは気持ち悪い。いちばん下がいちばんラク、っていうところがあります。これは亡くなった漫画家の赤塚不二夫さんが言っていたことなんですけど。

自分がいちばん下にいるって思えばみんながいろいろ教えてくれるんだから、それがいちばんいいんだって言っていて、「おっ!」と思ったんですよね。

春日 自分でいちばん下にいることを良しとするならいいんでしょうね。でもそこまで割り切れる人って、実は稀少。逆に「上にいたい」と思っているのに自分が望む状態や地位にいることができなくなって、ちょっとおかしくなる人はいるような気がします。

ぼくが常々言っている「人間の心の弱点3要素」っていうものがあるんですけど。それは、「プライド」「こだわり」「被害者意識」。変なプライドで苦しむっていうのが人間にとっての最大の弱点ですね。自分を含めて。

末井 そうですね。つらいですよね、プライド強い人はね。

春日 ただ、「いちばん下にいたい」っていうのと、プライドを捨てるっていうのは別の話だと思います。うまく自分のプライドと折り合いをつけてあえて「下に」と言っているのはそうとうタフな人。自暴自棄になって「俺がいちばん下だ」って言う人だと時々いるけれど。

末井 ぼくはたぶん、プライドはあると思うんですよね。でも、多くの人がいいって言う上を目指していくっていうのは大変なことだし、労多くして成功するわけでもないし。なんかムダじゃないか、と思うんです。これは合理的――かどうかはわかりませんけど。

春日 自分を顧みてこれは下品だな、と思うのが、「地位とかどうでもいいよ」みたいなことを言っていても、周りからまつりあげられるぶんには、あえて逆らわない、というようなところですね。

末井(笑)。それはぼくもあるかもしれないですね。

春日 そのうち「あれ、まつりあげないじゃん」とか不満を覚えはじめたりする、みたいなね。ふとしたときに自分のそうした部分に気づいて、ほんとに自分は卑しいな、って思うんだけど。いわば、無欲を装ってる、みたいなところが。

末井(笑)

春日 それだったらいっそのこと、えげつなく上を目指す、みたいな人のほうが実は清々しいような気もしたりしてね。