いまテレビを付けるとお笑い芸人の姿を見ない日はありませんが、スターはほんの一握り。多くはアルバイトなどで生計を立てながら、売れる日が来るのを願い、今日も芸を磨いています。水口靖一郎さんとコンビ「ソラシド」を組む本坊元児さんもその一人。後輩「千鳥」や同期「麒麟」らが売れていくなか、東京でなかなか芽が出なかったこともあり、吉本興業が手掛ける「住みます芸人プロジェクト」に2018年から参加。山形県への移住を決断することになりますが――。
住みます芸人プロジェクト
十年くらい前、住みます芸人プロジェクトが始まったときも、僕らには僕の出身地である愛媛に行かないかと声がかかりました。
そもそも、この住みますプロジェクトは、2011年に立ち上がったものです。日本中に笑いを届けたいということと、お笑いだけで食べていけない芸人に活躍の場を広げること、地方創生に協力する意味も込めて、始まりました。
会社は住みます芸人の旨みをどんどん言います。地方でも仕事はある、引っ越しの援助もある、聞き心地のいい言葉が続きます。
でも、芸人としてずっと売れていなかった僕は、会社や社員との接点がほぼなかったため、吉本興業がまるで詐欺師のように見えました。
なんで「行け」って命令しないんだろう。嫌だったら断ってもいいというのがなんともずるいじゃないか。僕には、すべてが言質(げんち)を取りたい態度にしか見えなかった。
「お前がやるって言うたやん」って、うまくいかなかったときに言う気だと思ったのです。