父と仲が悪かったという記憶はないが、可愛がってもらったなーという記憶もない。(写真提供◎青木さん 以下すべて)
青木さやかさんの連載「48歳、おんな、今日のところは『……』として」――。青木さんが、48歳の今だからこそ綴れるエッセイは、母との関係についてふれた「大嫌いだった母が遺した、手紙の中身」、初めてがんに罹患していたことを明かしたエッセイ「突然のがん告知。1人で受け止めた私が、入院前に片づけた6つのこと」が話題になりました。今回は「父のこと」です。

前回「老犬・おっぽとの暮らし。結婚したときも離婚したときも、いつも変わらず隣で眠ってくれた」はこちら

クラシックが好きだった父

父は8年前に60代で亡くなった。

「父があぶないかもしれないから愛知県の病院まで来てほしい」と連絡があった時は驚いた。

父が入院していることさえ知らなかったのだ。何度目かのがんの手術をすることになり、「東京にいて仕事が忙しいさやかに伝えると心配するだろうから、伝えなくていい。退院したら伝えるので」と父は言っていたようだ。

大変な手術というわけでもなかったらしいが、術後の日だちがよくなかった。
何度も手術したことで管を短く切っていて、うまく接続ができておらず、そこから液が漏れている、というような説明であった。
担当の先生は、丁寧に説明してくださったが、気が動転して頭に入ってこなかった。