100歳近くまで長生きをしてボケて亡くなるかのどちらかという時代に

私が高齢者専門の浴風会病院に勤めていたときは、亡くなられた方々の病理解剖の報告に毎週、接していましたが、そのときにわかったのは、85歳以上の方で、アルツハイマー型認知症の変性が脳にない方はいないということでした。

つまり、それくらいの年齢になると、脳は確実に老いていきます。軽重の差はあっても、85歳を過ぎればみな、脳の病理としてはアルツハイマーになっていることが普通なのです。

脳の老化を止めることは難しい?(イラスト提供:イラストAC)

寿命が今後100歳近くまで延びていくということは、身体のほうはある程度、健康が保たれるようになっていく一方で、脳の健康はそのように保てないというアンバランスを生んでいきます。結果的に、認知症などとつき合いながら過ごす老いの期間が延びていくという晩年をもたらします。

私が医学部を卒業した1985年前後は、アルツハイマーにかかったら5、6年で死ぬ病気とされていましたが、いまでは、10年生きることも普通です。それが今後は、もっと長くなっていくと考えられます。

嫌な言い方をすると、寿命が延びていくこれからの時代は、事故や、まだ解明できていない病気で早死にするか、100歳近くまで長生きをしてボケて亡くなるかのどちらかという時代になってくるはずです。

私たちの人生の晩年は、大きく変わろうとしているのです。

※本稿は、『70歳が老化の分かれ道 若さを持続する人、一気に衰える人の違い』(詩想社新書)の一部を再編集したものです。


70歳が老化の分かれ道 若さを持続する人、一気に衰える人の違い』(著:和田秀樹/詩想社新書)

2022年上半期、新書ノンフィクションベストセラー第1位。(日販、トーハン調べ)28万部突破!  70歳が人生の分かれ道。一気に衰えるのか、若さを持続するのか、その分岐点はそこに。人生100年時代を迎えたこれからは、70代の生き方がその人の「老化の速さ」、「寿命」を決める!