林 素晴らしい! 身の回りのことを自分でできて、仕事もなさっていて、こんなに幸運な方はいません。そのうえ、瀬尾まなほさんという優秀な秘書に恵まれ、編集者に愛されて。夫のもとから出奔した時に置いてきたお嬢さんとは、時を経て和解し、今ではお孫さん、ひ孫さんたちとも交流なさっているのですよね。
瀬戸内 不思議なものですよね。とはいえ、孫もひ孫も海外で暮らしていますし、言葉は英語。私の本も読めません。血の繋がらないスタッフたちが私にとっては家族のようなものです。
林 まなほさんの息子さんを「今までのどの男より愛おしい」って書いていらっしゃいましたね。
瀬戸内 まなほがここに連れてくると、私に飛びついてきてね、頭をなでるのよ。この髪のない頭が不思議でしょうがないらしいの。
林 先生の最後の男ですね!
瀬戸内 会うなりすぐに頭をなでてくれる男なんて、今までいなかったわよ。(笑)
林 先生の長生きの秘訣は、おおらかであらゆる人を受け入れること、好奇心旺盛なことですね。私、ひとつ印象に残っていることがあるんです。私の古い友人である物書きはとても偏屈な人で。彼女を含め何人かでレストランで食事をした時、先生をお呼びしました。
普通の物書きなら大喜びするところですが、彼女は有名人が嫌いなんです。「私は聞いてなかった」と、ちょっと失礼な態度を取ってしまって。後日私がお詫びの手紙を書いたら、先生は「彼女が書いているものの通りの人で嬉しくなった」とおっしゃった。
瀬戸内 書いているものと同じように振る舞うというのは、なかなかできることではないのよ。面白いと思ったし、好感を持ったのね。