もちろん古典がベースですが、時代に呼応して新しい作品を作り上げていくのも歌舞伎の醍醐味です。それこそ歌舞伎が始まった当初は全て「新作」だった。それらの新作が400年の時を経て、今僕たちが「古典」と言うものになっているのです。新作に積極的に取り組んだ勘三郎の叔父も「これが2回、3回と上演を重ねて100年後には古典になるんだよ」とよく言っていました。
僕も『新選組』を今回上演して終わりとはまったく考えていません。地方でも公演をしたい。さらにすごい先の話ですが、自分の子どもに『新選組』をやってほしい。孫がやったら「古典」になります。新作歌舞伎を作り、古典にすることを目指さなくして歌舞伎の存続はあり得ません。
僕が上演したい新作歌舞伎の案は、スマートフォンのメモに入っているもの、頭の中に描いているもの、たくさんあります。他の人に先にやられてしまったら悔しいので(笑)、今は自分の中で大切に温めています。一つだけ披露すると、ヒップホップ、ジャズ、ハウスといった全ジャンルのダンスを、歌舞伎の様々な仕掛けの中に取り入れて舞台にしたい。以前大学のダンスサークルの公演を見に行って度肝を抜かれたのです。無料の公演なのに、お金が入ってくるとか関係なく、情熱があればこれだけものが作れるのだと衝撃でした。そのサークルの人と一緒に新たな歌舞伎を作るという夢を実現させたいと思っています。
歌舞伎以外で好きなのは料理。兄たちは野球やゴルフが好きですが、僕は物を作るのが好きなのです。料理は歌舞伎と同じで、積み重ねが大事です。料理をしている時は考えごとをすることが多い。「今日の演技のあそこはああすればよかった」とか「あの役は自分ならこうやる」とか……。新作の構想が生まれることもあります。料理にせよ、歌舞伎にせよ、何かを作ることに対する情熱が、僕の一番の原動力です。
僕にとって「歌舞伎」は「情熱」。『新選組』も情熱をもって全身全霊で演じ、若い人たちにもたくさん見てもらい、いずれ古典となるよう作り上げていきたいと思います。