次第に、このままでいいのかなと

ただ、相方はどう思っていたかわかりませんが、ぼくはあの頃、少し複雑な気持ちでした。

基本的に、芸人は「面白い人」と思われてナンボなのに、その前に「すごい人」と思われてしまったら、笑いをとるときにもヘンなフィルターがかかってしまうのではないか。そう心配してしまうほどの反響でしたから。いったいこれからどうなっていくんだろう、と。

この頃、ぼくもレギュラー番組を多く抱え、過去最高に忙しい時期ではありました。

幸い仕事はたくさんいただいている。

でも、ぼくが子供の頃から見ているビッグ3(ビートたけしさん、明石家さんまさん、タモリさん)、所ジョージさん、笑福亭鶴瓶師匠、ダウンタウンさん、ウッチャンナンチャンさん、とんねるずさん……みなさんまだまだ現役です。

青春時代に見ていたくりぃむしちゅーさん、さまぁ~ずさん、ネプチューンさんも、みなさんバリバリやっています。

『HI, HOW ARE YOU?』(著:綾部祐二/KADOKAWA)

同世代には千鳥さんがいる。千鳥さんはぼくらと同世代ですが、昔から横で見ていても、いまのポジションに行くだろうなと、誰もが感じていたはずです。

じゃあ、ぼくらは?

正直、代わりとなる芸人はいくらでもいるポジションだと思います。

とはいえ、これまでもやってきた感じで、可もなく不可もなくやっていくことはできたでしょう。でも、それではワクワクしないんです。

次第に、このままでいいのかなと思うようになりました。

そんなときアメリカ旅行を経て、ハリウッドへの挑戦が自分の中で現実味を帯びてきました。

しかも、相方の又吉は芥川賞を獲ったことで、小説家としても独り立ちしている。もっともあの受賞があってもなくても、相方の反応は変わらなかったと思います。