かれん 原稿は母にも全部目を通してもらったけれど、認知症だと公表する部分を読んだ瞬間は「何でこんなことが書いてあるの」と、ムッとしてたわね。普段は認知症だということを忘れているから。でもその後あらためて会いに行った時に、「あなたたちが病気だって言うなら、そのまま書けばいいわよ」って。
ノエル 誇り高く潔い、母らしい反応だと思う。
かれん ある意味、母の病気のおかげできょうだいの結びつきを再確認できた7年間だったかもしれない。
ノエル そうね。私自身、家族の間でも本音を言えずにため込んでは爆発するというコミュニケーションの癖を見直して、自分が思っていることを素直に伝える練習ができたと思う。それが今、娘や周りの人たちとの関係にも役立っている気がする。
かれん 母は昔から、自分の親族や身の回りの困っている人を全力で助けてきたでしょう。そうした部分を尊敬していたし、自分もそうありたいと思ってる。ノエルも、カナダでもし困ったことがあればいつでも私を呼んでよね。
ノエル お互いもっと年を取ったら、「昔はあんなことも、こんなこともあったね」って穏やかに振り返れたらいいな。
かれん 美味しいワインでも酌み交わしながら、ね。