生きててよかった、と毎日思う

一度は考えるのも食べるのも拒んでいたお菓子。でも「もう一度作りたい」という気持ちが自然に湧いてきました。

片手でマカロンはできないけれど大好きなプリンなら、と思い、オーブンを購入。最初は左手で卵を混ぜるのも難しく、泡立て器が床に落ちたり、卵液が飛び散ったり。これも試行錯誤の末、大きめのボウルと平たい形の泡立て器で解決できました。

自宅の庭に開こうと考えているプリン専門店の模型。プリンは材料にもこだわる

できあがったプリンを、友人や近所のお世話になった人たちにふるまうと、皆さんとっても喜んでくれて。「これは売れると思うよ」という料理編集者らのエールも受け、実はいま、自宅の庭にプリンの専門店を作ろうと考えています。

といっても、無理をすると今度こそ死んじゃうので(笑)、週に3日、予約をとった分だけ作って売るようなスタイル。遠くまできてもらうので、待ち時間も楽しんでもらえるよう、チューリップや水仙の球根を植えて庭を整えているところです。

コロナ禍やウクライナ紛争などで世の中が一変してしまったけれど、食べたらちょっと幸せになるような、コクがあって、優しい味で、少し硬めのプリンを、一日も早くお届けしたいですね。

利き手が使えないとわかったとき、胸倉を掴んでしまった先生に、「あのときは、すみませんでした」と謝りに行ったことがあります。先生は笑って、「怒る気力がある人のことは、心配してないよ」と言ってくれました。

そんな僕でも一歩を踏み出すのに9年もかかってしまったけど、いまは生きててよかった、と毎日思います。おいしいものを食べるたび、そう思います。