ありのままを受け入れる等身大の強み

髪の毛を染め続けていると、実際の自分の髪がどの程度白髪になっているのかわからなくなるのと似ている。何かの事情で染めなくなったら、一気に真っ白な実態が姿をあらわし、そのことに自分が一番打ちのめされたりする。

それに比べて、中高齢の男性が容色の衰えに関して、何らかの努力をして何とかしようと奮闘しているという話はあまり聞かない。

最近の若い男の子はエステに通ったり、化粧品でお肌をケアしたりしているようだが、私と同年代の男性方はおおむね無関心。早々と居直っているというか、あきらめているというか。

もうちょっと見映えに注意したらどうよ! と言いたくなるが、どこかありのままの実態を受け入れて、そこから捨てるものは捨て、拾うものは拾っているという等身大の強みも感じる。おそらく容貌や容色で何かが左右されるという実感がない人生を送ってきたからなのかもしれない。

 

※本稿は、『老いを楽しく手なずけよう――軽やかに生きる55のヒント』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


老いを楽しく手なずけよう――軽やかに生きる55のヒント』(著:吉永 みち子/中央公論新社)

老いの入り口からまっただ中へ、歩みを進める70代。からだと心、お金や暮らし、家族やペットなど気になることは多々あれど、焦らず気負わず、おおらかに、たくさん笑って過ごしたい。人生の終い方を考え、日々の楽しみを見出すヒント満載のエッセイ集。『老いの世も目線を変えれば面白い』を全面改稿し、書き下ろし数編を追加して再編集した最新エッセイ。