(提供:Ⓒ田村セツコ/集英社)
可愛らしい女の子をモチーフに、1960年代には「りぼん」「なかよし」などで少女向けのおしゃれページを多数手がけたイラストレーター・田村セツコさん。文具や小物などの「セツコ・グッズ」で人気を博し、84歳となった今もなお一線を走り続けています。認知症一歩手前(?)でもますます元気な田村さんが考える、人生の楽しみ方とは。紙とえんぴつがあれば幸せ、という心の健康法を伝授します。記憶って、ゆらいだりボヤけたりして、まるでありえない抽象画みたい――。

ところどころ削除して、バランスをとっている

あるおばあさんの、ひとりごとです。

よく、カフェなどのお店のガラスに、手前のティーカップとか、前を通る人の姿とか、ビルや車が、おしゃれな絵のように、ダブって映っている時があるでしょう?そんな感じかしら? 記憶って。

あっちこっち、ゆらいだりボヤけたり、重なったり、ありえない抽象画みたいになったりする。時間というものも、行ったり来たり、過去と現在が自由にうごめく感じ。

忘れっポイ? ふふ。あたりまえでしょう。ちょっとやそっとの分量じゃない情報が頭と心にびっしり、ところせましと入っているんですものね。

だから、ところどころ削除して、バランスをとっているんじゃないかしら。