「もう戦争しないでいいんだよ」

終戦の日は、兵舎の門で歩哨に立っていました。ラジオは聞いていません。

夜になると、それまで灯火管制で真っ暗だった村に明かりがついた。酔っ払っている兵隊もいました。村の人がやって来て、「もう戦争しないでいいんだよ。あんたも帰っていいんだよ」と教えてくれました。

その時、歩哨だった僕の目の前を、上官が自転車の荷台に秘匿物資をうんと積んで走って行ったの。僕たちは梅干し一個だけで栄養不良になっていたのに、軍事物資はたくさんあったわけですよね。

隊に帰ると中尉が、「戦争に負けた。今までのことは勘弁してくれ」と言って頭を下げました。そこで僕の戦争が終わりましたね。嬉しかった。ああ、これで死なないで済んだ!って。

僕は外国の人からよく聞かれるんです。「あなたの国では、何を描いても文句を言われないのか?」と。いろんな国の人に聞かれる。「何を描いてもいいんだよ」と言えるのは、実は大変なこと。この自由を大事にしないといけないと、心から思いますね。