あるのは必勝の信念だけ

昭和20年4月、ついに僕にも召集令状が来ました。19歳。

恐ろしいものでね、召集令が来た以上は何がなんでもそこに行かなきゃならない。子どもがまさに今、生まれようとしていようが、明日結婚式があろうが、行かないなんてことはありえない。だから僕も行きました、仕方なしに。なんにもわからないままに行ったのです。

山口県の柳井というところの部隊に配属され、行って初めて「陸軍船舶兵なのか」と知りました。

任務は上陸用舟艇を隠すこと。舟艇といってもベニヤ板でね。小銃一発で穴が開いて沈んでしまうような代物です。そんなのに乗って、どこに上陸するかといったら、どこにも上陸しない。だって日本にいるんだから(笑)。

その船を隠すためのほら穴を掘るには、ものすごい手間がかかります。それで僕、「隠すよりも、作ったほうが早いんじゃないか」と言ったら、どなられちゃった。

食料もないから、兵隊はみんな栄養失調。朝はネギのお澄ましだけ。昼は梅干し一個ですよ。ほとんど食べるものなんてなくて、あるのは必勝の信念だけ。アメリカに勝てるはずがないんです。

僕は戦地に行っていませんが、戦争で何がいやだったかと言ったら、戦争そのものじゃない。上官たちによるいじめです。