「耳で喋る」ことを覚えて
加藤健一事務所に属するのは、俳優は加藤さん一人だけ。プロデューサーとして演目もキャストも演出家も、一人で決める。
――演出家を決めて渡したら、僕はもう口を出しません。演出家が二人いるみたいなのはまずいので。たまに脚本選びやキャスティングに失敗したかなと思っても、心の中でお客さんに「すいません」と謝って、口には出しません。(笑)
『スカラムーシュ』の次は、年末に『夏の盛りの蝉のように』(吉永仁郎作)が決まってます。これは葛飾北斎の話で、北斎のところに生き方もめちゃくちゃな画家たちが集ってきて、熱っぽく芸術談議を交わすっていう、それが夏の盛りの蝉のようだ、ってことなんです。
僕は滝沢馬琴(『滝沢家の内乱』)とか、リヒャルト・シュトラウス(『コラボレーション』)とか、物を作り出す人物を演じるのが好きなんだと思います。
『夏の盛り』の北斎役は、前に大滝秀治さんや加藤武さんが演じておられますが、両方とも見てないんで、自由に演じられると思いますね。