加藤さんが役を演じるうえで、いつもご自分に課している心掛けは?

――そうですね、よく役になり切る、って言いますけれども、僕は「舞台上を200パーセントで生きる」って言ってます。100パーセントはその役になり切って、100パーセントは冷静に自分をコントロールする。今、明かりがどこに来てる、とか、声の音量を考えたり。

たとえば人を刀で斬るときに、なるべく近くを斬らないと本当らしく見えない。役になり切ったら当たっちゃうので、ギリギリの冷静さを保ちながら、でも「殺してやるぞ」という本気さと、両方持っていないと駄目なので。

本当にうまくいくときは、自分が舞台の上にいるような感じがするんですよ。ちゃんと自分が見えてて、操り人形の人形遣いのように、自分を自由に動かせるときがあるんですね。そのときはすごく気持ちがいいんです。

 

私が伺う日がその日であってほしいですね。

――いやぁ、一つの公演に1回、あるかないかですからね、難しい。(笑)

【関連記事】
加藤健一「書店で立ち読みしボロボロ涙をこぼした。『審判』の芝居を上演するために、事務所を立ち上げることになる」
橋爪功「6歳の初舞台は『君たちはどう生きるか』の「コペル君」。たまにしか会えない親父が、歌舞伎座に連れていってくれた
松本白鸚「怪我も病気もしたけど、一切表に出さず。楽屋風呂の湯船に浸かってぼやーっとご先祖様と霊会通信する時間が好き」<後編>