「みんながおだやかに過ごすこと」の価値
川内 上げ膳据え膳にしなさいよ。だってそのためにお金払っているんだから、と。そういうことのすれ違いというのは、利用者のご家族と介護スタッフの間で生じがちです。
これを理解してもらうには、やっぱりもう「みんながおだやかに過ごすこと」の価値を、対話を重ねて気付いていただくしかありません。
この場合なら、ご家族に「あの職員が至らないところがあるのは分かります。しかし、利用者さんの力がそれで引き出されているということもぜひ理解していただきたい」とお話しして。
―― 「こっちがお金を払っているのだから、サービスという対価を示せ」というロジックに、「介護における対価は、健常者向けのサービスとは違うんです」と分かってもらう。これって、相当大変なことではありませんか。
川内 大変です。だからYさんが示した態度に、施設長さんは「この人は我々のサービスの意味が分かっているぞ」と驚き、喜んだということです。でも、施設の側にしたって、「払っていただいた分は(普通の「サービス」を)やってます。けれど、ああ、あの職員は確かにレベル低いですね、指導します」と日和るほうが楽ですよ。
―― それはそうでしょうね。
川内 でも、そこで日和るのは、やっぱり鍛え方が足りないというか。
―― ハハハ。