36歳でデビューするまで、約10年アルバイトをしながら小説を書き、投稿を続けていたという乾ルカさん。デビュー後はホラー、スポーツなどいろいろなジャンルの小説を発表していますが、根底にはいつも青春や友情というテーマがあったと話します。
今回の『水底のスピカ』も「こんな関係、理想的だよね」というおとぎ話のような友情を思い浮かべながら執筆したと語る乾さんですが、もう一つ、物語に込めた思いがあるそうで――(構成=野本由起 撮影=本社・奥西義和)

いつも根底にあるのは青春や友情

高校時代、楽しい青春の時間を送ったわけではない私が、3人の女子高校生による青春群像劇を書きました。そもそも私が小説を書き始めたのは、20代の頃。短大を卒業して就職したものの、じきに辞めてしまい、ハローワークに通う毎日。現実逃避したくて、本ばかり読んでいました。

そんな私に対し、母は「どうせ暇なんだから小説でも書いたら?」と。もともと妄想を膨らませるのが好きだったので、物語を考えるのは得意なほう。そこでアルバイトをしながら小説を書き、投稿を始めたのです。

デビューまでにかかった月日は約10年。「このまま死ぬまで落選し続けるかもしれない」と思ったこともありました。でも、報われなくてもいいからとにかく書きたかった。

そうやって投稿を続けた結果、36歳でデビューできました。デビュー後はホラー、スポーツなどいろいろなジャンルの小説を書いてきました。何を書いても根底にあるのは青春や友情。といっても、学生の頃の私になんとなく一緒にいる仲間はいましたが、結びつきは浅く、今では音信不通になってしまった人も。

思い返すと、学生生活はひとりだと何をするにも不利な「チーム戦」。そのため、戦略的に誰かと一緒にいたのだと思います。そんな青春時代を送ってきたからこそ、友情へのあこがれや期待が強く、小説の題材にしたくなるのでしょう。