12月号の書は「ゆうもあ」です
世の中に必要な心のゆとり
誰から見ても魅力的な人とは、知性、教養、ユーモア、思いやりにあふれた明るく優しい人ではないでしょうか。そのなかでもユーモアのセンスに関しては、どうやって身につけたらいいのかわからない人も多いと思います。
昔の日本の文化的な作品のなかにも、ユーモアの精神が見受けられます。たとえば、12~13世紀に描かれた『鳥獣戯画』。蛙と兎が相撲をとっていたり、猿や狐が滑稽なポーズをとっていたり、思わず頬が緩む絵柄ですが、実は当時の貴族社会や仏教界を風刺しているとか。ずいぶんと機知に富んでいますね。笑いと客観的な批評精神のバランスが、絶妙です。ほかにも狂言や歌舞伎、落語、フランス小咄などにもユーモアはちりばめられていますよ。
ユーモアとは、知性と精神のゆとりの賜物といえるでしょう。知性がなければ、上質のユーモアは生み出せません。でも残念ながら、最近はどうも、日本からユーモアの感覚が薄れてきているように感じます。
悩んだり落ち込んだりの渦中にあるときは、それどころではない、という方も多いかもしれません。でも実は、そういうときこそ、ユーモアの精神は大きな助けとなるのです。ちょっぴり惨めな気分やトラブルも笑い飛ばせば、自分も、まわりの人たちも心が軽くなり、明るい空気に満たされます。
ユーモアは、どんなにつらいときでも、明るく生きるためのテクニック。それを身につけるには、まずまわりを観察してみましょう。上質な笑いを誘う作品や、魅力的な人の振る舞いなど、いいヒントに出会えたらしめたもの。心にゆとりのある人が増えると、呼吸しやすい世の中になると思います。
●今月の書「ゆうもあ」