歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。
11月号の書は「地獄、極楽は、胸三寸にあり」です

迷い多き日々を送った若い頃

今でこそ皆さんの人生相談にお答えしておりますが、若い頃は私も迷い多き日々を送ったものです。

幼い頃に実母、継母と死別し、父とは一時、絶縁状態に。その父が没落して結核に倒れ、入院費と義弟たちの学費が私の双肩にかかりました。そのうえ騙されて株に失敗し、大借金。騙した人への恨みと憎しみで、心の中が煮えたぎるようでした。

あるとき、そんな私を見て、在家仏教の行者の女性が諭してくれました。騙されるほうにも油断と欲がある。だから、その人はあなたを修行させたと考えてみたらどうか、と。その言葉はすーっと心に沁み、自分が浄められた気がしました。するとその方は、こう続けました。