チャレンジ精神で単身ドーハに

「私は日本でイタリアンカフェレストランを経営しているのですが、あるカタールのロイヤルファミリーのご夫婦が新婚旅行で初めて来日した際に、連日お店を利用していただきまして。ご夫婦は目の前のホテルに宿泊していたのですが、ツアーコンダクターもつけておらず、どこを観光したらよいかわからないと言う。それで、私が『ここへ行ってみては』と案内したらとても喜んでいただいて。帰国後、ご夫婦から『お礼をしたい』と招待を受け、初めてドーハを訪れたのです」

「順子」のオープンテラス

その時は観光気分で5日間ほどの滞在を楽しんだが、日本に帰国して2ヵ月後、再びメールが届いた。そこには、「ぜひカタールで日本料理店を開いてほしい」という熱い思いが綴られていた。

「その方は日本で食べた本物の和食に感動したので、すばらしさをカタールに伝えたいと仰っていました。今でこそカタールのホテルにも寿司バーがありますが、当時は日本料理店が一軒あるくらい。日本の文化や食はまったく浸透していなかったのです。それはつまり、ビジネスにおける空白地帯であり、これから開拓できる土地であるということも意味します。迷いはまったくありませんでした」

当時、順子さんは57歳で還暦間近。夫に「還暦祝いに何が欲しい?」と聞かれた順子さんは、「フリーダムがほしい」と答え、カタール行きの許しを得たのだという。

「知らない土地で、一人でお店を作り上げるなんて、ワクワクしますよね。年齢的にもこれが人生のファイナルステージ。自分だけでどこまでできるか、チャレンジ精神で単身ドーハに渡りました」