元管理職や再雇用社員の強すぎる「自己正当化」が職場にもたらしたものとは(写真提供:Photo AC)
自分にとって都合の悪いことは棚に上げ、うまくいかないことがあるたびに「私は悪くない」と主張して他人や環境のせいにする……。「このような病的ともいえるほどの自己正当化が蔓延している」と指摘するのは精神科医の片田珠美さんだ。片田さんは「自己正当化が強すぎると、やがて周囲から白い目で見られるようになり、取り巻く状況がますます悪化してしまう」と警告を発します。最近では元管理職や再雇用社員をめぐる事例がとくに増えているそうで――。

現実を受け入れられない元管理職

企業で定期的にメンタルヘルスの相談に乗っていると、「自分は割を食っている」と被害者意識を抱いている人が多いことに驚く。

その最たるものが、役職定年制を導入している会社でポストオフになった元管理職である。一定の年齢に達すると、否応なしに管理職から外され、平社員と同じ仕事をさせられるのだが、なかなか受け入れられないようだ。

ある元管理職は、「30年以上も会社のために頑張ってきたのに、肩書も、権限もなくなり、おまけに給料も下がった。給与明細を見て、愕然とした」と、面談の際に不満と怒りをあらわにした。

不満と怒りの原因はほかにもあるようで、別の元管理職は「管理職だった頃は、部下が自分の言うことを聞いてくれたのに、ポストオフになったら、若い人が自分の言うことを聞いてくれない。それどころか、無視する奴もいる」と嘆いた。

おそらく、部下は役職を見て従っていただけだろう。だから、それがなくなったら、誰も言うことを聞いてくれないのは仕方がないと私は思う。切ないかもしれないが、それが現実である。ところが、その現実を受け入れられないようだ。

また、ポストオフを、「もうあなたには期待していません」「いつ辞めてもらっても結構です」といった会社からの肩叩きと受け止めて、「所詮頑張っても同じだ」と意気消沈する元管理職も少なくない。こういう場合はモチベーションを保つのが難しい。