「ちくわとキャベツの磯辺バター蒸し」
栄養士でありフードコーディネーターでもある藤岡操さんが「食堂のおかみ」になりきって提案するレシピ連載。大胆にも、この店のお品書きは「酒蒸し」1本! といっても、具材がや調味料が変われば趣も変わる魔法のレシピ。蒸し器がなくても、フライパンと料理酒さえあれば誰でもできるメニューの数々です。第3回は「ちくわとキャベツの磯辺バター蒸し」です。

本日のメニュー
「ちくわとキャベツの磯辺バター蒸し」

私はちくわをさげすむ人を信用しない。以前、仕事でチクワを使って料理をしたとき、「ちくわってなんか嬉しくないですよね~。味は美味しいですよ。でも、ちくわの良さがわからないんですよ~」と言った人がいた。私が一生懸命ちくわを料理している傍らで、よくもまあそんなことを言うもんだと呆れつつも、心の中で叫んだ。ちくわの魅力を知らんとは、人生損してまっせ~!

そもそも、ちくわをはじめとする練り製品は人間が生み出した偉大な食べ物だ。魚介の身を水にさらしてキレイにして、すり身にして裏ごしし、塩などの調味料を加えて粘りが出るまで練り込んで、焼いたり、蒸したり、油で揚げたりして、ようやく完成する。鯛やハモなどの高級魚のほか、刺身や切り身で流通しづらいものや、たくさん獲れて余りがちな、ホッケ、スケトウダラ、エソ、イシモチ、キントキダイ、サメなどが使われることがあるのは、魚介を無駄なくいただく知恵でもある。

何より、魚の旨味が凝縮していて美味しいじゃないか! ちくわはおでんにするとだしを含んで旨味たっぷりになるし、切るだけでサラダやあえ物のアクセントになる。照り焼きにしたり、穴にチーズやキュウリを詰めたり、お弁当の隙間にもイイ感じに収まってくれる。こんなに親しみやすくて魅力的なのに、おまけに美味しいって認めながらも良さがわからないって、どういうことだ! 偏見か? マウントか? ウインナーに負けてるとでも言いたいのか? 

ひとまず深呼吸をして…
ちくわ好き私が作る、愛しの酒蒸しを紹介します。