自分の負の感情を背負ってくれているような気がする
『WanteD! WanteD!』は、私が格安シェアハウスで下の住民の奇行に悩まされ、ウィークリーマンションに避難していた時によく聴いていた。安心できる場所がない、明日の生活が見えない。そんな時、彼女が踊る姿を繰り返し見た。
(『WanteD! WanteD!』のMVではいたずらっこのような表情や、自分を抱きしめるなんとも切ない表情、海辺での憐憫の表情など、一曲の中でいったいいくつの顔を見せるんだと、思わず唸らされる。)
以前のコラムでも書いたが、『No Time To Die』は、私が書き手として発信する中で時に誹謗中傷にも遭い、自分を抑え込むようになって苦しかった時に見た。
そういう、人生で辛い時、自分を見失いそうな時、彼女の歌い、踊る姿を見ると、自分の鬱屈とした感情や、孤独、怒り、悲しみ、そういった感情が共鳴し、心が震える。
押さえつけていた、押し込めていた感情を爆発させるような彼女の表現を見ると、自分の感情が解き放たれたような感覚になる。
彼女の苦悶するような表情、荒い呼吸やうつろな目。どこかを静かに見つめる横顔、決して満面の笑みではない、静かな笑み、上を見上げる穏やかな表情。それらを見ると、なぜか分からないが、自分の感情を投影してしまう。
まるで、自分の負の感情を背負ってくれているような気がする。
こんな風に自分を投影してしまう存在は、他にはいない。
太陽のような明るさや、にぎやかさ、晴天のような笑顔で元気をもらう人だっているだろう。
でも、人間の陰の部分を細密に表現することで救われる人だっている。
平手友梨奈本人がどう思って表現しているのかはわからないし、これは私が勝手にそう解釈しているだけだが、私は少なくとも、平手友梨奈という孤高の表現者に心を奪われ、救われている一人だ。