日本女性の髪型の美しさを伝えていきたい
実際に、髪を整えるところを見せてもらった。再現してもらったのは、平安時代の垂髪。大正時代から使っているという電熱器で鉄のコテを熱し、髪の癖を整えてまっすぐにしていく。鏡台の前に立つとスッと登美子さんの背筋が伸び、櫛やコテを手際よく操るように使っていく。その軽やかさには目を見張るものがある。「やはり仕事は好きですわ」とほほ笑む姿が若々しい。
「日本髪は結髪用の元結できつく結んでいくんです。舞妓さんたちは7日くらいもたせますから。でも最後は痛くないように絶妙にフワッとさせる。結われている間、じっと我慢している人のことも気を使いますね」
コロナ禍により祭事の中止を余儀なくされたが、2022年10月、3年ぶりに時代祭が開催され、結髪を手がけた。「祭が再開されると聞いたときは、もううれしくて。人と人が心を触れ合わすことで文化を繋いでいくと思っていますから」と登美子さんは顔をほころばせた。
髪を結い飾ること――かつては神への祈りに通じていたが、時代とともに人は髪型を通して矜持や美を表現してきた。登美子さんは、時代ごとの人々の生き方や願い、そこから生まれた髪型の意味にも思いを馳せる。
「どんな時代でも、心身ともにきれいでありたいという人の願いは変わりません。これからも私は、日本女性の髪型の美しさを伝えていきたいと思っています」