成績の良し悪しと母の機嫌を気にせず、これから生きてゆける
「その制服、**高校? 進学校じゃない? どうして大学に行かないの?」
胸が痛む。が、この質問は予想していた。
「家はあまり裕福ではなく、一日でも早く自立して社会人になりたいと考えたからです」
「自立か、さすが、難しい言葉を知ってるんだね」
「いえ、そんな」
「へえ、漢字検定2級取ってるんだ、凄いね」
「いや……」
女性が活躍。未経験者大歓迎。
男性は柔和な口調で仕事内容を説明してくれた。未知の世界の話に、私は熱心に耳を傾けた。頑張って働いて、自立するんだ。
「……何か質問はありますか?」
「寮に住まわせてもらいたいんですが……」
「ああ、うちの寮は……」
寮で一人暮らし。一人暮らし。夢みたい。
「……お忙しいところ、ありがとうございました」
「若いのに真面目なあなたに、ぜひこちらで働いてもらいたいです。前向きに検討の上、連絡しますね」
男性の言葉や表情に嘘はなかった。
成績の良し悪しと母の機嫌を気にせず、これから生きてゆける。
私は深々と頭を下げた。
門を出ると、急に空腹になった。
よし、前祝いにちょっと豪華なランチを食べよう。級友達が休日に遊びに行くというショッピングモールに出かけて、そこのカフェレストランで評判のオムライスを頼もう。