まとわりつくような母の優しさに覚えた違和感

夕方、帰宅前に携帯を確認すると、母からの着信とメールが100件ほど届いていた。

まとわりつくような母の優しさに、何とも言い難い違和感が(写真提供:Photo AC)

朝はひたすら質問攻めで、昼頃から怒ったり脅したりで、夕方が近付くと心配や不安におののいているようだった。少し、胸が痛む。

けれども、私は母から自立するのだ。

決意を固め、ドアを開けた。鍵は掛かっていなかった。

「お帰り! あかちゃん!」

母は駆け寄り、私を抱きしめた。

「良かったあ、もう、お母さん、あかちゃんが帰ってこないんじゃないかと思って心配で不安でおかしくなりそうだったんだから」

母は素早く鍵を掛けた。

「さ、入りなさい」
「うん……」

まとわりつくような母の優しさに、何とも言い難い違和感があった。

「戻ってきてくれて、本当に良かった」

安堵している様子に嘘はない。でも、何だか怖い。怒られるとか、そうじゃなくて。