後はあなたたちの好きなように

10月頃の単行本の表紙撮影では、カメラマンやスタッフに囲まれ、上機嫌。「ありがとう!」なんて大声で手を振っていた元気な母でしたが、やはり90代後半は油断できないものね。1月に入ってふとしたことで頭を打った母は、みるみる容態が悪化。

家族が呼ばれた時にはすでに意識がなく、たった2日で旅立ってしまいました。本ができるのを楽しみにしていたのに。

「延命をしない」「葬式はしない」が母の希望でしたので、身内だけの「直葬」で送りました。コロナ禍でもあるし、友人たちも高齢だし、いい選択だったと思います。

虫の知らせと言うわけではないけれど、施設入居後、母に「大事なお友だちのリストを書いて」とお願いしていました。最初は面倒くさそうな顔をしていたものの、書いて郵送してくれて。それがあったので、大切な方々にはすぐに連絡ができました。

先日、そのうちのひとりからお花を贈りたいと連絡があったの。届いたのは、一般的な白い花ではなく、赤やピンクの華やかな花かご。さすが母の友人だけあって、母の人生をよく表している。

一度、私が運営するSSSネットワークのお墓(ひとり女性のための共同墓)に入らない? と聞いたことがあるんです。でも母はしばらく考えて「やっぱりお父さんの入っているお墓に入りたい」と言う。そりゃそうねと思っていたら、こう続けたの。「だけど、入った後はあなたたちの好きなようにしてね」と。私にも弟にも子どもがいないから、ずっとお墓を維持するのは難しい。そう言われてホッとしました。

母は人生をやり尽くして、後悔はまったくないようでした。これから私も含め年を取っていくなかで、ひとりで過ごす時間も長くなるでしょう。そんな時、母の生き方は一つの指針になるのではないか、と思うのです。「人生、大満足です!」、私もそう言えるような人生を送りたい。お母さん、あっぱれな老い方を見せてくれて、ありがとう!