ゆたかで、愉しく、時に哀しい
どうしてそんな素晴らしい能力を彼等は持っているのだろうか。
それは彼等が人間を信頼し、いつも自分(人間のほうですよ)のことを忘れずに考えてくれているように思うからである。
これが人間(たとえ家族でも)であったらそうはいかない。一見忠実に見える犬たちの様子は、人間に安堵を持たせ、やがて彼等へのいつくしみが湧いてくる。
人間と違って無償の愛情をくれている(実際は餌や糞[ふん]の始末はしているが)ように思えるのである。
まあこんな一般論はどうでもよろしい。
御託を並べても、一頭の犬(猫でもいい)と一人の飼い主の間に起こったことは一言で言いあらわせないほど、ゆたかで、愉しく、時に哀しいものなのである。