お父さんが帰るまでガンバローね
「アイス君が、先程……」
「そうか、アイスもあなたもよく頑張った」
「はい、アイス君は本当に頑張ったわ。あなたの帰りが待てなくて、すみませんでした」
その日、私は急遽、帰宅することにしていた。というのは、容態はメールで報せて来ていたのだが、昨日、犬が元気になったせいか、電話で話をした。
その電話の最後に彼女は言った。
「お父さんが帰るまでガンバローね、って言ったら、少し声を出したのよ」
――そうか、家人は私に心配をかけまいとしていたのか。
一時間後、東京のスケジュールを調整し、電話を入れた。
「明日一日戻るよ」
「仕事の方は?」
「大丈夫だ」
それで、先刻の電話だった。