年を取ってよかったのは、長く生きた分いろいろな人に出会っているので、人間がより深く理解できるようになったこと。そうすると本を読んでも絵を観ても、映画やお芝居を観ても、前よりもいろいろなことが感じられるようになり、おもしろみが増すんです。年齢を重ねるって損ばかりじゃないですね。

兄が逝き、妹を失い、母を失い、ひとりになってから8年。不思議なことに家族がいなくなったことで、かえって自分が家族に支えられているという気持ちが強くなっています。

生きている間は、悩み1つ家族に相談したことがなかったのに、今、私に「こんなことでメゲちゃだめだよ」と言ってくれるのは、亡き人たち。人は亡くなってからも人を支えられるのです。バラバラな家族でしたが、私、みんなのことが大好きだった。

吉行家のお墓は青山にあり、母と妹と兄が眠っています。兄は分骨してもらったの。父のお墓は岡山ですが、土を少しだけ持って帰り、小さな壺に移して、父のつもりで一緒に埋めました。だから、最後に私が入れば、生前にはできなかった、わが家で初めての一家団欒がお墓で実現します。(笑)

私はもうしばらくはひとり暮らしを満喫するつもり。みんな、一家団欒はもうちょっと待っていてくださいねーと、お墓に向かって語りかけています。

昨年の暮れに占い師さんに見ていただいたら、「今まで大変でしたけど、春からうーんとラクになって、すごく楽しいことができますよ」ですって。こういういいお話は積極的に信じて楽しみにしなくては。88歳になる今年、どんなに素敵なことが私に起こるのか。ワクワクしながら待ちたいと思います。