大島優子や橋本環奈の例

やや珍しいケースとしては、大島優子の例がある。1988年生まれの大島優子は7歳のとき『ひよこたちの天使』(TBSドラマ系、1996年放送)で子役デビュー。その後、多くのドラマ、映画、CMに出演した経歴を持つ。

ただ大きなきっかけに恵まれることなく芸能生活を続けていた。

ところが、2006年にAKB48のオーディションに合格したところから運命が変わる。知られるように、グループのセンターを務めるほどの人気メンバーとなり、卒業後は俳優として活躍している。

大島優子よりさらに後の世代になるが、橋本環奈も似た経緯をたどっている。

1999年生まれ、福岡市出身の彼女は、地元でCMや是枝裕和監督の映画『奇跡』(2011年公開)などに出演した子役だったが、その後地元福岡のご当地アイドルグループに所属。

そのイベントでたまたま撮られた写真が「奇跡の一枚」としてネットで大きな話題になり、俳優としての道を進むことになった。

これらは子役からアイドル歌手を経ての俳優というルートだが、2000年代以降、よりシンプルに子役としての成功が大人の俳優への確立された登竜門になっていく。

「子役は大成しない」というようなステレオタイプな見方は単純には通用しなくなるのである。

※本稿は、『子役のテレビ史 早熟と無垢と光と影』(星海社)の一部を再編集したものです。


子役のテレビ史 早熟と無垢と光と影』(著:太田省一/星海社)

「挫折する子役」から大人の俳優へ

「かつての子役は、たとえ爆発的な人気を集めたとしても、子役のままで終わるケースが珍しくなかった。(中略)そこにはしばしば、大人の俳優へと上手く脱皮することの難しさ、それゆえの挫折があった」(「はじめに」より)。ところがこの状況は80年代後半、後藤久美子や宮沢りえなど自己を主張する子役の登場によって転機を迎える。大人の俳優やタレントになるための道筋ができたのである。本書は高峰秀子や美空ひばりなど映画時代に大きな成功を収めた子役から、芦田愛菜や鈴木福など「賢さ」を身に付けた現代の子役まで、およそ一世紀におよぶ子役の歴史的変化を作品と社会の両方から解き明かす。