筆者の関容子さん(左)と

仁左衛門さんの舞台から吹いてくる風には若さがある。36年ぶりに仁左・玉コンビが再演して大きな話題となった南北の『桜姫東文章』では、権助のむせ返るような男の色気が劇場中に充満した。仁左衛門さんはどうして、いつまでも若いのだろう。

――人としての進歩がないだけなんです(笑)。皆さん歳を重ねていかれるにつれて人としての厚みがついてくるんですけど、私にはその厚みが身につかないんです。

以前に若手芝居で演じた作品を映画にしたいと制作会社からオファーがあって、前に自分がやってた役かと思ったら、父親役だったので断ったけどね(笑)。私は自分の歳を自覚できていないんですね。

 

そういうのはやらないでいいと思います。目標となさっている十五代目羽左衛門は、生涯、若衆役でした。歌舞伎でも白(はく)(白髪の鬘をつける老け役)はやらなくていいと思います。

――私は、若衆は無理だけど、老けはもちろんですが、お客様が受け入れてくださる範囲で若い役も勤めていきたいと思っています。ただし私自身がどこまで許せるかですね。その見極めが大事ですね。