やっと身の丈にあったものを背負える

「1日でガラリと立場が変わるって、とても怖い経験なんです」

トップスターに就任した日。一夜明けたら何もかもが変化していた経験は、それからの3年間、早霧さんの心を離れなかった。

『すみれの花、また咲く頃――タカラジェンヌのセカンドキャリア』(著:早花 まこ/新潮社)

再びたった1日で全てが変わる、トップスターの座を退く時に自分はどうなるのか。誰からも見向きもされなくなる自分を想像して、震えたこともあったという。

私などからは想像もつかないことだが、「コンプレックスだらけ」という自己認識も影響していたのかもしれない。

「宝塚に入った時から、やめた後のことは一瞬たりとも考えてなかったの。宝塚の日々が終わったら、ああもう何もない。やめた後に仕事はありますか? って14歳の私が心配していた通り、自信なんてなかったから。きっともう、なにもできないって」

退団公演の千秋楽を終えた時の安堵と解放感を、早霧さんは鮮烈に記憶している。3年間背負い続けた「雪組」の重みを降ろして、やっと身の丈にあったものを背負えると心底ほっとした。

だがそれは、新しい闘いの始まりでもあった。