人生における成功はひとつではない。何をもって成功とするかは、人それぞれ違っていいと僕は思います(撮影:文藝春秋)

人生における成功はひとつではない

僕の小説には、夢を追いかけて頑張る若者がたくさん登場します。「夢を叶える」というのはきれいな言葉ですが、その下には何千、何万の苦労や不安、挫折があります。

残念ながら、努力をしてもすべての人の夢が叶うわけではありません。それでも僕は、これまで努力してきたことは確実にその人の財産になっているし、たとえその夢が叶わなかったとしても、人生に失敗したことにはならないと考えています。

たとえば『パーマネント・ブルー』にも登場しているダンス仲間のミッチーは、大学卒業と同時にダンスをやめて、いい企業に就職しました。今は家族を養って幸せに暮らしています。それも素晴らしい成功の形です。

夢を追うのは素敵だけれど、ある程度まで頑張った後に諦める判断をするのも大事なことです。人生における成功はひとつではない。何をもって成功とするかは、人それぞれ違っていいと僕は思います。

小説を書いたのは今作が初めてなので、作品としてのクオリティーがどんなものなのか、自分ではまったく分かりません。たくさんの人に楽しんでいただけたらいいなと思いますが、今はワクワクドキドキ、通信簿をもらう小学生みたいな気持ちでいます。(笑)

あなたが人生で何か大きなものに立ち向かおうとしている時、僕の作品が、勇気を出す小さなきっかけになれば嬉しく思います。