美容師を辞めた時は、目指すものがあったとはいえ、心に穴が開いて自分が空っぽになったような心もとなさを感じていました。途中でキャリアを手放してしまったことで、将来に対しても「不安」の二文字しかなかった
「歌うっていいなあ……」と最近思えるように
生まれたのは山口県で、長崎県の佐世保市で育ちました。両親が美容師だったので、自分も同じ道に進もうと思って、高校卒業後は福岡の美容専門学校に。それから東京の美容院に就職し、美容師としてしばらく働いていました。
歌はもともと好きだったのですが、働くうちに、自分の中で「歌い手になりたい」という気持ちがどんどん大きくなってきて。結局、どうしても夢を諦めきれず、美容院を辞め、工事現場などで働いて生活費を稼ぎながら、ひたすらヴォイストレーニングやオーディションを受けて、プロデビューを目指しました。といっても、ダラダラやるつもりはなくて、「2年やってみて、ダメだったら美容師として一から出直そう」と、期限を決めて始めたんです。
田舎のおふくろは心配していたでしょうが、「せっかく東京に出たのだから、そこでしかできないことをやりなさい」と背中を押してくれましたね。ただ、親父はビビリなので、おふくろは僕の状況を詳しくは話していなかったと思います。(笑)
そんななか、2006年9月にEXILEの新ヴォーカリストを決めるオーディションがあると知り、即座に応募しました。自ら決めた2年の期限が近付いていたこのタイミングで、ファンだったEXILEのオーディションが始まるのは運命だと感じました。
最終的に、僕は歌い手になる夢を叶えてEXILEの一員になれたわけですが、本当の意味で大変だったのはそれからでした。
何でもそうですけれど、大好きな趣味や娯楽が「仕事」になった場合、楽しむというレベルにまでもっていくには、かなりの時間がかかると思うんです。僕の場合、「歌うっていいなあ……」と心から思えるようになったのは、ごく最近です。
EXILEは、2016年にメインヴォーカルのATSUSHIの海外留学にともない、グループとしての活動を休止。2年の充電期間を経て、18年、ATSUSHIの帰国とともに活動を再開した。
僕にとって、歌への意識を変える良いきっかけになったのが、この充電期間です。それまでさまざまな人に囲まれて目の前のスケジュールをひたすらこなす日々を送ってきたので、最初は戸惑いました。
でも、時間に余裕ができたら、気持ちにも余裕が生まれた。人に会ったり、好きな映画やライブを見に行ったり。さらに曲作りなどのアウトプットをしつつ、自分が決めた方向に自分のペースで進むという単純なことができるようになったら、考え方も前向きになりました。結果、その感覚を維持したまま、昨年EXILEの活動に自然に復帰することができたんです。あの時期に一呼吸置いて自分のための時間を持てたことは、僕にとって転機になったと思います。