介護力の判断基準はいくつかありますが、もっとも重要なのが「介護者の人数」です。(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
厚生労働省の予想では、2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。だからこそ、認知症がどんなふうに進行するか、認知症患者の最期はどうなるのかということを知ってほしい、と語るのは、20年以上認知症治療に関わってきた認知症専門医・長谷川嘉哉先生。
認知症の進行段階を「春」「夏」「秋」「冬」の4つに区切ったとき、各段階でどんな症状が表れるのでしょうか。一日中ぼんやりするようになり、人生の終幕の静かな気配が近づいてくる末期、「決断の冬」の症状です――。

いつまで家で生活できる?

「できるだけ長く家で看てあげたい」

そう考えるご家族は多いものです。

住み慣れた自宅で家族と過ごすほうが、患者さんがホッとすると思うのでしょう。

ただ、介護負担が限度を超えても、頑張り続けようとする方がいるのは困りものです。


90代のフジワラさん(女性)は、末期のアルツハイマー型認知症。

帰宅願望や徘徊も落ち着き、最近では家でボーッとしている時間が多くなっています。

歩行介助や食事介助も必要になってきました。

そんなフジワラさんの面倒を、一人で看ているのが同居の娘さんです。

昼間はお勤めがある娘さんは、フジワラさんにはできるだけデイサービスに行ってもらい、夕方から翌朝にかけて食事やトイレのお世話をします。

困るのは、夜になると、フジワラさんが頻繁に娘さんを起こすことです。

娘さんは1~2時間おきにお母さんをトイレに連れて行ったり、眠れないといえば話し相手になったり、外に出たがるお母さんに付き合って深夜の散歩をしたり。

そのせいでコマ切れにしか眠れず、久々に診察室でお会いしたときはひどい顔色をなさっていました。