フジワラさんの娘さんのように介護者が一人しかいないケースも、当然ながら、介護力が乏しいと言わざるをえません。

たった一人しかいない介護者が倒れれば、それまでだからです。

結局、フジワラさんの娘さんには、私がドクターストップをかけました。

似たような状況に陥っているご家庭は、やはり患者さんの施設入所を考えるべきなのです。

特に、患者さんを看ているのが、配偶者さん一人の場合は要注意です。

離れて暮らすお子さんは、「オフクロが看てるから大丈夫だろう」「お父さんがそばにいるなら平気かな」となんとなく安心しがちです。この安心が、配偶者さんが実はすごく無理をしていることを見過ごさせてしまいます。

ですから、離れて暮らすお子さんは、「もし、患者さんが一人暮らしだったら?」と想像してみてください。

患者さんは一人でトイレに行けますか? 食事ができますか? 不測の事態があったら、誰かに助けを求められますか?

これができないようなら、四六時中、誰かがそばにいなければいけないわけですから、その時点で施設入所を考えたほうがいいのです。

『ボケ日和―わが家に認知症がやって来た!どうする?どうなる?』(著:長谷川嘉哉/かんき出版)